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猫がこねる わたしゃ文字打つ

『君に届け』22巻までの感想① 風早くんはオナニーしている

君に届け』を読んだ同居人が、「風早くんはオナニーしてるね」と断言したとき、この漫画がなんで面白いのかが分かった気がした。

 

当然、風早くんのオナニーシーンがあるわけじゃない。

この本を読むと、風早くんはさぞや悶々とした苦しい夜を過ごしているだろうな、といらん心配をしてしまう。

 

君に届け』は、暗くて地味でさえない爽子が人気者でさわやかイケメンの風早くんから告白されるという王道な少女漫画だ。爽子は自分の恋心にすらなかなか気づかず、風早くんの気持ちにはさらに鈍感だ。読者には風早くんが早い段階から爽子に気があることがわかるように描かれる。風早くんかわいいなあ、爽子早く気づいてやれよ、と同情し、応援したくなる。これって実は新しいんじゃないか。

 

物語の序盤は、爽子がクラスメイトからの「誤解」を解く物語になっている。クラスメイトからの誤解がとけ友人関係を築いた後、こんどは爽子が風早くんを「誤解」する。風早くんの好意を受けて、かわいそうな子だから気を使っているだけだという「陰気特典」だとまちがった認識をしてしまう。自分の恋心を自覚し卑下する弱い心を乗り越え、風早くんを信じようとしたとき、二人は結ばれる(いい話だ)。

 

さらに試練は続く。つきあって半年経って、風早くんには「俺はわがままで独占欲が強くて、爽子が思うような好青年じゃない…ぶっちゃけ、もっと束縛したいんだよね」という負い目がある。う~ん、つきあってるからこその悩みだ。ていうかどんだけ爽子が好きなのこの人。さらに読むと、「俺は爽子が思ってる以上に、もっとチューとかギュッとかしたい。でも爽パパとちゃんとつきあうって約束しちゃったし。だから距離とらなくちゃ」と、欲望と理性の間でも闘っている。この男の子サイドの苦悩が、オナニー説に至ったのである。少女漫画でちゃんと男の子の心理が描けてる漫画って実は少ないと思う。

爽子に「私だって嫉妬する。けっこう独占欲つよいんだよ」と言われてホホを染める翔太。よかったね。最近はじわじわといい感じに、かつ健全にエロくなってきて、いいぞ、もっとやれ。

 


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